2022年8月8日、阪急・阪神・山陽・能勢電の4事業者からICOCAポイント還元サービスの導入が発表されました。
またすでに回数券の発売終了を発表している阪神以外の3事業者の回数券発売終了もあわせて発表されています。
▶ICOCAによる「阪急電車ポイント還元サービス」の開始と回数券および往復乗車券の発売終了について[PDF]
▶回数乗車券・往復乗車券の発売終了とICOCAによるポイントサービスの開始について|山陽電鉄[PDF]
京阪神で競合するJR・阪急・阪神。通常運賃の水準もほかの地域よりも低く抑えられていますが、阪急・阪神は普通回数券のほかに「時差回数券」や「土休日割引回数券」など割引率の高い回数券を発売。さらにそれらを両者の同運賃区間で利用できる引き換えサービスまで行っていました。
また以前はJRでも驚異的な割引率を誇る「昼間特割きっぷ」があり、現在でもICOCAによる「時間帯指定ポイント」、PiTaPaによる「時間帯指定割引」が導入されています。
しかし、ICカードの普及に加え、新型コロナウイルスの影響による乗客数の減少により、各地で回数券の発売終了が相次ぎ、乗客の「いかにお得に乗れるか」の意識が高く、使用頻度はほかの地域に比べてかなり高かったであろう阪急・阪神の回数券もついに販売終了となります。
ここでは、阪急電車・阪神電車の回数券の発売終了前に知っておきたい、ICOCAポイント還元サービスの詳細と登録方法、またPiTaPa利用者向けの利用回数割引について現時点で判明している情報をもとに詳しくまとめてみました。
回数券の発売終了時期とICOCAポイント還元サービスの導入時期
先に回数券の発売終了が発表されていた阪神はすでに2022年9月30日をもって販売を終了。
今回発表された山陽は2023年3月31日、同じく今回発表された阪急と能勢電は2023年4月30日をもって回数券の発売が終了となります。
ICOCAポイント還元サービスの導入については、阪神が2022年9月1日から、山陽は2023年3月1日から、阪急と能勢電は2023年4月1日からとなります。
ICOCAのポイント付与は11回目以降の運賃の10%が基本
各社のICOCAポイントの付与率は、1日から末日の同月内に同一運賃区間に10回以上乗ると、11回目以降は運賃の10%、阪急と能勢電に関しては31回目以降は運賃の15%となります。
なお、阪神電車のうち阪神本線・阪神なんば線・武庫川線と元町ー西代の阪神神戸高速線、阪急電車のうち阪急神戸線と花隈ー新開地の阪急神戸高速線とは別で集計されます。
貯まったポイントは、翌月の15日以降3ヶ月後の末日までにチャージする必要があります。なお、10ポイント未満の端数は切り捨てです。
阪急・阪神・山陽・能勢電でポイント還元サービス連携予定
2022年9月の阪神を皮切りにスタートするICOCAポイント還元サービスですが、2023年4月までに阪急・阪神・山陽・能勢電の4事業者でポイント還元サービスの連携が行われる予定です。
ポイント還元サービスを利用するには、4事業者のいずれかで利用登録を行えば、4事業者のポイント還元サービスに登録ができ、還元されたポイントのチャージも4事業者分まとめてできます。
ただあくまでポイント還元サービスへの登録、ポイントのチャージが4事業者でできるだけであって、阪急阪神回数券引き換えサービスのような他社の同一運賃区間の乗車回数を合算するということではなさそうです。
なお登録できるカードはICOCA(こどもICOCA・SMART ICOCA・KiPS ICOCA・モバイルICOCA[阪神の券売機のみ可能]を含む)のみとなります。
他社のICOCAポイントを登録していてもあらためて登録が必要
阪急・阪神・山陽・能勢電の4社ではいずれかでポイント登録をすれば、4事業者のポイント還元サービスへの登録ができますが、すでにICOCAポイントの導入を行っている以下の事業者でICOCAポイントを登録していても、阪急・阪神・山陽・能勢電の4事業者のポイントは貯まりません。必ず4事業者の駅での登録が必要です。
- JR西日本(中国ジェイアールバスの山口エリア、近江鉄道バス・湖国バス、松江市交通局、一畑バスを含む)
※JR西日本については2023年3月7日から「WESTERポイント(チャージ専用)」に名前が変わっています。 - 京阪電鉄
- 京阪バス(京都京阪バスを含む)
- 神戸新交通(ポートライナー・六甲ライナー)
- 神戸市バス・山陽バス
いち早く導入する阪神では2022年9月1日からポイント登録がスタート
いち早くポイント還元サービスをスタートする阪神では、ポイント還元サービスがスタートする2022年9月1日からポイント登録がスタートしました。
ドーム前、桜川以外の各駅に設置されているICカードトレイのついた新型券売機で登録が可能となっています。
登録する内容は、氏名・生年月日・電話番号です。すでに氏名と生年月日が登録されているICOCA定期券やSMART ICOCA、こどもICOCAに関しては電話番号のみの登録でOKです。
利用登録した月の1日にさかのぼってポイント還元が適応されるので、あわてなくても月末までに登録をすればその月の乗車分がポイント還元されますよ。
阪神の券売機では「モバイルICOCA」でのポイント登録も可能
2023年3月22日からAndroidスマートフォンで使えるようになった「モバイルICOCA」。
阪神のICカードトレイのついた券売機でポイント登録が可能です。
ポイント登録の方法
2022年9月1日、ポイント登録が可能になったので、早速登録してきました。
▼1.新型券売機画面の右上「チャージ・ICOCAポイント・履歴を確認する」をタッチ
▼2.右側の「ICOCAポイントの利用・登録・履歴を確認する」をタッチ
▼3.登録したいICOCAをトレイに置く
▼4.「ICOCAポイントの利用登録をする」をタッチ
▼5.利用登録の確認を読んで「同意する」をタッチ
6.名前を入力(無記名ICOCA・モバイルICOCAの場合)
7.生年月日を入力(無記名ICOCA・モバイルICOCAの場合)
▼8.電話番号を入力
下の物理テンキーは使用できないので、タッチパネルで入力します。
▼9.入力内容の確認して「確定」をタッチ
▼10.登録完了。ICOCAをトレイから取る。
以上で登録が完了します。これで阪神だけでなく、阪急・山陽・能勢のポイント登録も完了です。
阪神の規約には「特定サービスポイント」という項目が
いち早くICOCAポイントサービスを導入する阪神では、ポイント還元サービスの利用規約[PDF]も公開されています。
これを見ると第11条に(特定サービスポイントの付与)という項目があり、以下のように記載されています。
前条の規定にかかわらず、特定サービスとして、特定の期間、区間、付与率等(以下「適用条件」といいます。)を別に定め、普通ポイントと異なる特定サービスポイントを対象路線ごとに付与する施策を実施することがあります。
阪神電車ポイント還元サービス 利用規約より
普通ポイントとは別に特定サービスポイントがあるということは、期間や区間を区切ってさらなる割引をするために用意されているものと考えられそうです。
これがどういう形で運用されるかはわかりませんが、おそらくJR西日本で行われている時差通勤施策「ICOCAでジサポ」や期間限定の往復で15%引きなどキャンペーンのような形で使われるのではないでしょうか。
PiTaPaにはすでに利用回数割引があり、登録がいらないから楽
今回ICOCAポイント還元サービスのみが発表されているので、「PiTaPaには何も割引がないんじゃないか」と思ってしまいますが、PiTaPaにはすでに利用回数割引が導入されています。
今回発表されたICOCAポイント還元サービスのポイント付与率と変わらないので、どちらを使っても変わりありません。
ただそれぞれにメリットとデメリットがあります。
ICOCAはポイント利用の登録と、貯まったポイントは3ヶ月以内にチャージ作業が必要です。ただしチャージされたポイントはICOCAが使えるすべての路線に加え、物販利用もできるので運賃の割引だけのPiTaPaよりも用途が豊富です。
PiTaPaは他社も含めてポイント登録が不要な上に自動割引。ポイントをチャージする必要がありません。
また2023年3月には「モバイルICOCA」がAndroidスマートフォンで導入されました。
まったく手間がいらないPiTaPa、券売機でチャージの手間があるICOCA、チャージの手間はあるもののスマホ上で完結するモバイルICOCAのいずれかから自分の使いやすいものを選ぶといいですよ。
回数券がなくなるともうお得には乗れない。回数券があるあいだは回数券を使う。
阪急・阪神は普通回数券に加え、土休日ダイヤに終日使える「土休日割引回数券」と平日10時から16時までと土休日ダイヤに終日使える「時差回数券」を発売していましたが、それも阪神ではすでに2022年9月30日をもって発売終了。阪急では2023年4月30日で発売終了となります。
阪急・阪神で回数券の引き換えができた「阪急阪神回数券引き換えサービス」も、阪神の回数券発売終了と同時の2022年9月30日で終了しました。
個人的にはJR西日本の「時間帯指定ポイント」のようなものも出てくるのではないかと期待したのですが、今回の発表ではまったく言及されていません。
おそらく導入される予定はなく、むしろ阪急の回数券廃止のタイミングでJR西日本が「時間帯指定ポイント」をやめてしまうのではないかと思っています。
と書いていましたら案の定、2023年2月のWESTERポイントのニュースリリースにポイント付与率が10%になることが記載されていました。
回数券自体の発売は、阪神が2022年9月30日まで、阪急が2023年4月30日までですが、購入月の翌月から3ヶ月目の末日までが有効なので、阪神では2022年12月31日まで、阪急では2023年7月31日まで使うことができます。
回数券が発売されているあいだは回数券を購入、その後は時間帯指定ポイントがあるJRを使うか、クレジットカードでチャージができるSMART ICOCA、おそらくクレジットカードでチャージができるモバイルICOCAのいずれかをを利用し、クレジットチャージ分のポイントを貯めるくらいしか方法はなさそうです。
鉄道に安く乗れる時代は終わったのかもしれません。
コメント