2017年3月31日、関西私鉄で使える磁気カード、スルッとKANSAIカードの発売が終了、そして2018年1月31日をもって改札機やバス運賃箱、券売機や精算機での使用も終了となりました。
(※近鉄、京都市交通局、山陽電鉄、神戸電鉄、北神急行の5社局は券売機、精算機での利用が可能)
関西のほとんどの私鉄と地下鉄、バスを1枚のカードでシームレスに利用することができたので、とても便利でしたね。
スルッとKANSAIカードがなくなってしまった今、代わりになるカードはどれを選べばいいのかを考えてみました。
スルッとKANSAIカードの後継となりうるカードは3つある
スルッとKANSAIカードの後継となりうるカードはICOCA、PiTaPa、阪急阪神能勢北急レールウェイカード(2019年2月28日で販売終了)の3つ。
それぞれに特徴があるので、順に紹介します。
ICOCA
JR西日本のICカードでプリペイド(先払い)。
JR西日本と近鉄、京阪、南海、阪急、阪神、能勢電鉄、北大阪急行、泉北高速、大阪モノレール、京都市交通局、Osaka Metro、神戸市交通局、神戸新交通、山陽電鉄、神戸電鉄、北神急行の駅で購入可能。
(北陸や四国でも買えますがここでは割愛)
駅の券売機や精算機、チャージ機、バスの運賃箱(一部非対応)で現金チャージ(積み増し)が可能。
クレジットカードでもチャージができるSMART ICOCAもある。
JR西日本のICOCAエリアに加え、
関西私鉄PiTaPa、JR北海道Kitaca、JR東日本Suica、関東私鉄PASMO、JR東海TOICA、中部私鉄manaca、JR九州SUGOCA、九州私鉄nimoca(函館ICAS nimoca含む)、福岡地下鉄はやかけんの全国相互利用エリアでも利用可能。相互利用エリアではないが札幌SAPICAエリア、岩手・宮城odecaエリア、仙台icscaエリア、新潟りゅーとエリア、広島PASPYエリア、熊本くまモンのIC CARDエリアでも利用可能。
基本割引はないが、Suica、PASMOエリアでは1円単位でおおよそきっぷより安いIC運賃が適用。
Osaka Metroと大阪シティバス・京都市交通局・神戸市交通局では地下鉄とバス、バス同士の乗り継ぎで割引適用。
南海バスではバス同士の乗り継ぎと阪堺電車との乗り継ぎで割引適用。
京阪バスでは事前登録すればポイントがつき、ポイントで割引(ICOCAのみ)。
※項目は便宜上ICOCAにしていますが、Kitaca、Suica、PASMO、TOICA、manaca、SUGOCA、nimoca、はやかけんでも同様です。
ただし、2017年4月15日時点で山陽バス、伊丹市バスではICOCA、PiTaPa以外利用できません。
PiTaPa
スルッとKANSAIのICカードでPiTaPaエリアではポストペイ(後払い)。それ以外のエリアはプリペイドでチャージが必要。引き落とし口座設定のため申し込みが必要で駅では買えない。
ICOCA同様全国相互利用エリアでも利用できる。
PiTaPaエリアでは後払いのため、割引が充実(ICOCA欄記載の割引も適用)。
ただ、既存の回数券を超える割引をしているところは少ない(ほぼ同等になるのは1回目の乗車から割引になるOsaka Metro・大阪シティバスと南海バス、区間指定割引を登録した阪堺電車くらい)。
PiTaPaエリアではICOCAもPiTaPaも既存の磁気カード、乗車券、回数券、磁気定期券との併用ができない。
不足額の精算も不可(阪急はICOCAによる不足額の精算が可能)。
またPiTaPaエリアでのICカードによる乗車券購入は京阪、近鉄、南海、山陽電鉄を除いてできない。
阪急阪神能勢北急レールウェイカード(2019年2月28日で販売終了)
阪急電鉄、阪神電鉄、能勢電鉄、北大阪急行(以下北急)の阪急阪神系の4社だけで2019年2月28日まで発売されていた磁気カード。上記4社でのみ利用可能。2019年9月30日で利用終了。
今までのスルッとKANSAIカード同様、乗車券、回数券、磁気定期券との併用が可能。
阪急、阪神、能勢、北急以外の路線では利用不可。
普通に乗るだけならICOCA、チャージの手間を省いて少し安くしたいならPiTaPa、阪急・阪神・能勢・北急のみのユーザーで今まで通りならレールウェイカード
今までスルッとKANSAIカードだけで電車・バスに乗っていたならICOCAだけで問題ありません。駅ですぐ買えますし、チャージをすれば繰り返し使えます。
またPiTaPaはPiTaPaエリアではポストペイなのでチャージの手間が省け(他のエリアで使えるプリペイド分をPiTaPaエリア内でオートチャージする機能もあり)、割引も複数の事業者で自動適用、登録をすればさらなる割引もあり、よりスムーズで少しお得な移動が可能です。
ただ、ICOCAもPiTaPaもスルッとKANSAIカードが使えていた比叡山鉄道(坂本ケーブル)、和歌山バス、和歌山バス那賀、南海りんかんバスではICカードシステム自体が導入されていないため使えません。
これらを利用する際は現金もしくはその会社専用の磁気カードが必要となります。
なお阪急、阪神、能勢、北急の各社での阪急阪神能勢北急レールウェイカードの販売は終了しましたが、手持ちのカードは2019年9月30日まで回数券や磁気定期券との併用が可能です。
また2019年3月1日からは阪急線内の回数券に限り、阪急の各駅にある乗り越し精算機でICOCAによる差額支払いができるようになっています。
京都・神戸の市営交通と民営化されたOsaka Metroと大阪シティバスにも磁気カードが残る
京阪神の市営交通には専用の磁気カードが残ります。
京都市交通局の「トラフィカ京カード」、Osaka Metro・大阪シティバスの「回数カード」、神戸市交通局は「市バス・地下鉄共通NEW Uラインカード」が2018年2月1日以降も残り、改札機を含めて利用可能です。
ICOCAでチャージの手間を極力少なくするなら「SMART ICOCA」がおすすめ!
ちなみにこれからICOCAを作ろうと思っている場合は、「SMART ICOCA」がおすすめです。
券売機で買える普通のICOCAは現金でしかチャージができませんが、SMART ICOCAならクレジットカードからチャージができます。
以前はJ-WESTカードからしかチャージができなかったんですが、今は海外発行のクレジットカード、デビットカード以外ほぼ全てのカードでチャージが可能です。
チャージ方法は簡単で、JR西日本ICOCAエリアの駅にある券売機、精算機、チャージ機で「クイックチャージ」を選んで、あとは金額(3,000円〜)を選ぶだけ。
私も初めはJ-WESTカードでチャージをしていましたが、今は▶️リクルートカードでチャージしています。
J-WESTカードではチャージ額に対して0.5%しかつかないポイントが、リクルートカードなら1.2%。仮に3000円で計算するとJ-WESTカードが15円なのに対して、リクルートカードなら36円とかなりお得です。
ちなみにPiTaPaに関しては、それぞれの沿線のカード(私は阪神沿線在住なので、阪急阪神のSTACIAカードにしています)がおすすめです。
ここからは余談。お暇があればお読みください。
最終的にはICカードだけになる!?
他のエリアでは早々に磁気カードからICカードへの切り替えが進んでおり、関西だけ、それもスルッとKANSAIだけが長らく残っていました。
その理由としてあげられるのが、JRの昼間特割きっぷや私鉄の時差、土休日回数券など使い勝手のいい回数券の存在。
特に関西私鉄の回数券は金額式というどの駅からも乗車できて、乗り越した場合は回数券の額面の差額だけ払えばいいというルールのため、回数券とまとめて改札機に入れるだけで差額が払える磁気カードの需要が多くあります。
現に4社のレールウェイカード発行も「磁気定期券、回数券利用者が乗り越しで利用するニーズがある」との見解から磁気カードのままの発行を続ける旨を2016年7月4日のITmediaNEWSの記事が伝えています。
とはいえ、ICカード化の波は確実に来ており、それが今回PiTaPa導入事業者10社でのICOCA発売とスルッとKANSAIカードの発売終了に繋がるわけです。
PiTaPaを導入している他の私鉄各社がICOCAを発売するようになっても未だに阪急阪神系の4社は磁気カードの発売を継続しているためか
「PiTaPaは阪急が始めたから意固地になってICOCA入れへん」
(注:あくまでICOCAを発売していないだけで利用は可能)
という意見も散見されますが、私は純粋に券売機や改札機の更新タイミングの問題だけだと思っています。
既に関西私鉄でICOCAを導入した各社は両脇や各種投入口付近が黄色や赤く光る新しい券売機やICカードをかざす部分が青く光る新しい改札機に変わっています(泉北高速のように改札機はそのままのところもあります)。
ところが阪急、阪神、能勢、北急の4社ではつい最近まで見かけませんでした。
が、ここに来てようやく、阪急にも新しい券売機や新しい改札機が入り始めました。
桂駅で見つけた阪急の新しい券売機。これが普及すれば阪急でもICOCA発売されるでしょ。おそらく。 https://t.co/POqKFK2DUi pic.twitter.com/Fa81kXgwQR
— 山﨑 謙 – Ken Yamasaki (@kenfm) March 29, 2017
ここからは私の憶測ですが、今年度中に4社でも券売機や改札機の更新が行われ、来年度までにはICOCAの発売が開始されるような気がします。
(※2017年4月当時の憶測です)
またJR西日本でも2015年に昼間特割きっぷを12枚綴りから6枚綴りに変更した際、「ICOCAによる新たな近距離利用促進サービス導入」との記載があり、
来年度には私鉄の時差、土休日回数券も含めた大掛かりな割引システムの変更があるのではないかと思っています。
この動きに先駆けて、PiTaPa陣営でもある京阪バスが2017年の4月からICOCAを登録すると乗車ごとにポイントを付与し、そのポイントで実質回数券並みの割引をするシステムを始めています。
また、関西きっぷ文化の真骨頂とも言える、JR西日本の昼間特割きっぷは2018年9月30日を最後に発売を終了。
2018年の秋からはICOCAへのポイントサービスへ移行される予定です。
また同じく2018年の秋からPiTaPaは近畿エリアのJR線ではプリペイドからポストペイに変更となり、月単位で自動割引が適用される予定になっています。
このような割引システムがICOCA、PiTaPa問わずどのICカードでも自動適用されるようになれば、回数券、磁気カードはおろかきっぷすら必要なくなるかもしれません。
自動改札の普及、共通乗車カードの導入に先鞭をつけてきた関西の面目躍如なるか?期待したいところです。
と書いてたらこんなニュースが…。
"阪急阪神HDの担当者は「いつまでも磁気を残し続けるわけにはいかないのも現実。ピタパへの移行を長い目で促していく」と話す"
本当にピタパだけで行くつもりなの!?
春からの定期券「イコカ」にしよか 関西私鉄で利用拡大:朝日新聞デジタル https://t.co/W7yhs9V21s— 山﨑 謙 – Ken Yamasaki (@kenfm) April 7, 2017
阪急阪神HDの担当者は「いつまでも磁気を残し続けるわけにはいかないのも現実。ピタパへの移行を長い目で促していく」と話す
マジですか…阪急さん…(苦笑)。
そして4社、2019年春からICOCA販売開始へ
2018年3月29日、4社からついにICOCA、ICOCA定期券の発売開始とレールウェイカードの利用終了のアナウンスがありました。
【リリース発信】(共にPDF)
■阪急、阪神、能勢、北急におけるICOCAおよびICOCA定期券の発売についてhttps://t.co/2V0L0rTlfG
■「阪急 阪神 能勢 北急レールウェイカード」の取扱についてhttps://t.co/EWmA838Sov
— 阪急電鉄【公式】 (@hankyu_ex) March 29, 2018
2019年9月30日のレールウェイカードの利用終了をもって共通利用の磁気カードは幕を下ろすことになります。
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